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初恋の証人
認知症介護【87】
6月16日、幼い頃に一緒に遊んだという92歳のマサさんを訪ねた。懐かしい対面をし、昔話が楽しく続いていた。そのうちにババが何度も同じ事を繰り返し、口にするようになった。「
ここを少し下った所にカネさんの家があったんじゃないかねぇ?」「カネさん?誰だろう?そんな方いらしたかなぁ?」曖昧なので話は適当な返事ぐらいで流されるのだが、忘れた頃にまたババが同じ話しを繰り返す。マサさんの娘さんが「ユナチさんと同じ村出身の方?」と聞いた。ババがそうだと答えると「あ、それだったらカズさんの事かも知れない!」ということになり、娘さんはさっそく「カズさん」に連絡をとってくれた。私達は予定外だが急遽カズさんのお宅を訪問することになったのである。私は「もしかしたら・・・」という予感をこの時感じた。
久しぶりに会うカズさんとババは再会を喜びあった。間違いなくこの再会の感動もババの記憶に残るだろうと確信した。そのうちにカズさんのご兄弟の話題になった。お兄さんのヒサオさんはババと仲がよく、またお姉さんのナツさんは不器用なババに機織やらいろいろなことを教えてくれたそうだ。ナツさんは40歳で亡くなられたということだった。ババは「
ナツさんには本当にお世話になってねぇ〜」とだんだんこの言葉ばかりを繰り返すようになった。
タイミングを見計らい、私はカズさんに「おばさん、聞いてもいいですか?もしかするとヒサオさんはとっても本の好きな方じゃなかったですか?」と尋ねた。「
そう!好きだったよ。」「もしかするとお母さんの憧れの人だったのじゃないかしら?」「
うん。聞いたことがあるよ。2人は仲がよかったのよ。私もユナチお姉さんが大好きだった。」「ヒサオさんも少しはお母さんのこと、気にしていたのかなぁ?」「
ううん、少しどころじゃないヨ!でもユナチさんの家はお父さんが学校の先生だったし、家柄も違いすぎて、お嫁さんにほしいって頼んでもお父さんが許してくれないだろうって!」「ええ〜っ!!」2人は相思相愛だった?
カズさんが続ける。「
ヒサオ兄さんが老人ホームに入所した時、ユナチお姉さんが面会に来てくれたの。ホームの方がヒサオ兄さんに「きれいな女性ですね」って言ったらお兄さんは「ありがとう!」って答えたのよ。」と笑いながら教えてくれた。会話の内容は初耳だ。その後ヒサオさんは亡くなられ、私はそのことをババから聞いている。もちろんその時はヒサオさんがババの憧れの人だったことは知らなかった。ババはきっとあの時寂しかっただろうなぁ・・・。

ババに「お母さん、ヒサオさんもお母さんのこと、気にしていたんだって!!スキだったらしいよ!」ババは少しうろたえ、困ったように「
そうかねぇ??でも頭がよくて、とても本を読むのが好きで道を歩くときも本を読みながら歩いていたのよ!」・・・つながった!!
(認知症介護【50】参照)何て素晴らしい時間が与えられたのだろう!そしてこの予定していなかったカズさんとの対面はババの心の中の、目に見えない誘導によるものだ。ヒサオさんもババも今はそのほのぼのとした恋を語ることはないが、もしかしたら2人は2人だけに通じる世界を持っていたのかも知れない。
2006年06月18日 | 認知症介護・日常_1 | トラックバック:0 | コメント:2
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